Photo/Saori Kojima
Text/Ayako Futatsuya
「毎日やるお料理に比べて、洋裁は身近じゃないし、避けて通ろうと思えば避けられる。でも、苦手だと思い込んでいることを取り払ってあげると、人生の幅が広がるんじゃないかと思います」。浦安市内で「ミシンスタジオROE」を営む小野田恵美子さんは、子供から大人まで参加できるミシンのワークショップを開催し、気軽な洋服作りでハンドメイドの楽しさを伝えています。
今から15年ほど前、愛娘のためにお宮参りのドレスを手作りしたことをきっかけに、小野田さんは作家として歩み始めました。作品を見た友人の間で評判になり、子育てサロンやイベントに参加するようになったそう。「そのうちに教えてほしいという声が上がってきて、最初は公民館で教室を開いていました」。2014年にはお父様が事務所として使用していた自宅の1階にスタジオを構えることに。コンセプトは「今日着る服を今日作る」。めんどうな作業を極力なくし、ミシンに苦手意識を持つ人も楽しめる、時短ソーイングが特徴です。
「小さいときから手作りが好きでしたね。ウェディングドレスも手作りしたんです。でも、人に教えるようになってから勉強はしましたが、もともと洋裁を専門的に学んできたわけではなく、独学なんです」と意外な経歴を語る小野田さん。「初めはそこが引っかかっていましたが、学問として一から学んでこなかったからこその発想ができてるのかなと最近は思います」と弱点も強みに変え、スタジオはママたちの憩いの場に。「結婚・出産をすると “母”や“妻”になり、呼ばれ方が個人じゃなくなるんですよね。そんな中で自分の時間を持つとすごく癒しになるんです」
出産を機に浦安で暮らし始めた小野田さんは「浦安は行政的にも制度が整っていて、子育て世帯にとって住みやすさはピカイチ。ママたちは情報に敏感で、やりたいことは我慢せずやる人が多い」と、この町の印象を語ります。「ROEに来てくださる人もステキな方ばかり。お客様に恵まれて、感謝しかないですね」とにっこり。店名の由来を聞いてみると、長女と自分の名前の頭文字から取ったものなんだとか。「作家仲間もお子さんの名前を付けてる人が多いです。出産は人生を見直すきっかけになります」。生地、ボタン、カラフルな糸。好きなものに囲まれた空間で見せる笑顔には、母の優しさと女の子の好奇心がどちらも内在しているようでした。