Photo/Saori Kojima
Text/Satoko Nemoto(Sawa-Sawa)
葛西臨海公園駅から歩いて15分ほどの南葛西商店街。『和菓子 入船』のショーケースをのぞくと、最中や豆大福と並んで、“小松菜”の文字が目に入ります。江戸川区の特産品である小松菜を使った和菓子「さざなみ」を、店主の塚原武文さんが出してくれました。
割ってみると、香ばしい焼き皮の下にきれいなうぐいす色のあんが顔を出します。口どけのよいこしあんは、しっかりと甘く、素朴なおいしさ。かむうちによもぎのような草の香りが、ほんのりと鼻に抜けます。「こしあんは、品質のよい北海道産の原料で作った白あんを、専門のあんこ屋さんから仕入れています。それにうちで砂糖を加えて、小松菜のパウダーを練り込んでいるんですよ」と塚原さん。作り始めたきっかけを聞くと、「10年ぐらい前かなあ。商工会議所から、小松菜のお菓子を作ってほしいと言われてね」と話します。当時、江戸川区産の小松菜がスーパーに見当たらず、粉末に加工された小松菜を使って、羊羹やまんじゅうをいくつも試作したそう。「小松菜を皮のほうに入れると、緑色が変色してしまって。中のあんに入れることにしたんです」
原料を小松菜と言い当てるのは難しいかもしれませんが、江戸川らしいお使いものに喜ばれそう。「さざなみ」のほかに、小松菜入りの白あんをこしあんで包んだ「江戸川餅」もあります。「近隣に住む方や町会でも、おみやげに使ってもらっていますよ。小松菜の和菓子とぜんざい最中を組み合わせたりしてね」
ぜんざい最中は『和菓子入船』の定番。「うちはあんこがおいしいって言われます」と塚原さんが胸を張るように、ぜんざい最中のつぶあんは北海道産の小豆を使った自家製。「塩を入れて甘みを引き出すと味がくどくなるから、塩は使わずにあっさりした甘みにしているんですよ」とおいしさの秘密を教えてくれました。
話を聞いている間も、小さな子供を連れたお母さんが何人も、和菓子を買いにやって来ます。この場所に店を開いて46年。今もなお、地域で愛される和菓子屋さんなのです。
※記事内容は2016年2月時点のものです
住所 | 〒134-0085 東京都江戸川区南葛西5-8-12 MAP |
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電話 | 03-3688-1605 |
営業時間 | 10:00~19:30 |
定休日 | 水曜定休 |
その他 | アクセス/葛西臨海公園駅東口より徒歩15分
メニュー/さざなみ158円、江戸川餅136円、ぜんざい最中158円 ※カード不可 |
【編集担当/don】
子供の誕生祝いにはお赤飯、入学や卒業時には紅白のまんじゅうと葛西に住む人々のお祝いごとには入船の和菓子が欠かせません。そんな生活に深く寄り添っている地元愛あふれる老舗の和菓子屋さんです